めまいはいろんな疾患からおこりますが、鍼灸は原因がなんであれ改善させていくことができます。
突発性難聴や急性低音障害型感音難聴(ALHL)でもめまいを伴うことがあります。内耳にリンパ液がたまりすぎるメニエール病(内リンパ水腫)でもおこります。
耳鳴りがなく めまいだけがおこる良性発作性頭位めまい症というものもあります。良性という名前の通り危険な病気ではありませんが、なにしろ頭を動かすたびに数秒から数十秒 めまいがおこるので患者さんはたいそう不安になります。起き上がったとき、寝たとき、寝返りを打った時や下を向いたときにおこります。
原因は耳石やごみが耳の半規管に入り込み、感覚神経を刺激するためです。耳石は耳石器というところにくっついているのですが、はがれることがあるのです。平衡機能訓練法といって積極的に頭を動かす治療法があります。鍼灸も有効です。2021年4月
耳鳴りの治療は非常にデリケートです。鍼灸治療によって一時的に 耳鳴りが大きくなることもありますが心配はいりません。半日から1日で 収まり 治療前より小さくなります。あるいは治療前と同じになります。
もし耳鳴りが 大きくなったままの時は おっしゃってください。治療法を再検討します。2022年6月
水恐怖症(ハイドロフォビア)とネット検索してみると、幼いころのトラウマとかいろいろ出てきます。心理療法や抗不安剤による治療が一般的なようです。難治性であるような印象を抱きがちですが、この前 治療した患者さんは2回で治りました。
2021年の1月に患者さんは「耳鳴りを治したいと」来院されました。昨年12月に突然 右耳に穴が開いたような感覚に襲われました。鼻も右の首、ノドの右側もつまるようになりました。この時 水を触ると気持ち悪いという感覚が突然 出てくるように。耳の違和感も水に触るとひどくなります。お風呂に入れなくなり、短時間のシャワーを我慢しながら浴びています。
耳鼻科に行くと高音域 4000~8000Hzの聴力が70㏈に低下していることがわかり突発性難聴と診断を受けました。約一か月後 聴力は回復したのですが、耳鳴りは治まらなかったため結(ゆい)に来院されました。仕事は12月からお休みされています。
2回治療すると、耳鳴りは少し軽くなりました。何より水恐怖がなくなり、ゆっくりお風呂につかれるようになったとのこと。約一か月に6回治療したところ、昼間の耳鳴りは気にならなくなり、仕事も再開されました。ここでアンケートをいただきました。
◆患者さんのコメント
「非常によい結果があった。ほとんど完全に治り苦痛はない」「治療前の苦痛を10とすれば1である」というアンケート回答をいただきました。コメントは以下の通りです。
治療するごとに、少しずつ耳の変化ありました。治療前はお風呂(水の中)に入れなかったのですが治療2回目ぐらい以降より湯舟につかれるようになりました。一生シャワーの生活かもと思っていたので、お湯につかれるようになったのは大変ありがたいです。
耳鳴りも仕事中は気にならなくなりました。寝るのもぐっすりと寝れるようになっています。ハリは思っていたより痛くなかったです。コメント以上
◆考察
じつは水恐怖症の治療はTFT思考場療法の本の中で、紹介されていました。
TFTは、「鍼のツボをタッピングすることであらゆる心理的問題を改善させていく米国発の新しい心理療法」と日本TFT協会のHP上で紹介されています。私はTFTのやり方を本家の中医学の立場から再構築し、タッピングよりももっと強力な鍼を使っていろいろな恐怖症を治療しています。広場恐怖はよく治してきました。パニック障害にも効きます。
水が怖くなって一か月ほどでしたから、簡単に治るのではと思っていたら、簡単に治りました。患者さんには「脳の回路のバグをとれば治るのです」と説明しています。中医学的には経絡(けいらく)、気の流れを通します。鼻のつまりもノドのつまりも肝欝気滞(かんうつきたい)を改善すれば治ります。2021年4月
2020年6月初めに50代の女性が来院されました。普段は仕事をされていますが、4月からは新型コロナ感染症の感染予防のために自宅待機を余儀なくされていました。5月中旬に突然 右耳に拍動性の耳鳴りが出現し、右の首や肩が痛くなりました。頭痛もあります。
2回の治療で耳鳴りはほぼなくなりましたが、まだ首や肩の痛みが残ります。5回治療したところで、痛みも軽くなったため週一回のペースに落とし、7月中旬まで治療を続け、再発のないことを確認して7月中旬に卒業していただきました。
◆コメント(アンケート回答)
アンケートでは「ほとんど完全に治り苦痛はない」「治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は1である」という回答をいただき、以下のコメントをいただきました
コロナの自粛期間中に右側の耳鳴りと閉そく感、首の痛み肩の痛みが現れ2週間ほど様子をみていましたがよくなる様子がなく不安になり結鍼灸院を訪ねました。
途中 左耳にも閉そく感が出始め今まであまり感じたことのない頭痛も出てきて不安になりましたが、治療のたびにその時々の症状を聞いてくださり不安を取り除くような声掛けと治療をしていただきました。季節が梅雨ということもあり、少し症状が戻った時もありましたが 少しずつ良い方向へ向かい耳鳴りや閉そく感、頭痛はほぼゼロになりました。今は仕事等で疲れると少し肩がこる程度で、ゆっくり休めばおさまります。色々と有難うございました。コメント以上
◆考察
仕事も休みとなり自宅待機の日々、身体も動かすことも減り、右耳や周囲の経絡(けいらく) 気の流れが滞り、右側の耳鳴りと閉そく感、首や肩の痛みが出たものです。耳鳴りで不安になったのではなく、不安は新型コロナ感染症、緊急事態宣言の中でもともとあったのです。身体の不調が不安を増幅させたのです。不眠もありました。「途中 左耳にも閉そく感が出始め」とありますがこれは治療を始める直前の症状です。片耳だけなら我慢していても、両耳がおかしくなり始めたから来院されるという患者さんは多いのです。
気の流れを整え、気持ちを落ち着かせるのは鍼灸の得意とするところです。耳の症状は自律神経の不調とつながることがよくあります。※個人情報保護のため話の設定を少しだけ変えている場合があります。2020年10月
0年4月新型コロナ感染症の緊急事態宣言の自宅待機が生み出した耳鳴りのお話です。今回はめまいは全然ない症例です。
20代の元気な青年が突然の耳鳴りに苦しめられました。
5月初旬の夜、突然 左耳がピーッと鳴り始めました。なかなか眠れません。翌朝になるとさらに音が大きくなりました。翌々日に近くの耳鼻科に行き、聴力検査を受けましたが聴力は問題ありませんでした。ステロイド薬を飲みましたが全然よくなりません。眠れないし、考えが混乱し日常生活の動作にも支障をきたすようになりました。一人暮らしができなくなり、親もとに戻りました。近くの耳鼻科から大学病院を紹介され、いろいろ検査を受けましたが特に異常は発見できません。近くの耳鼻科の医師は「なんだろう、これは」と首をひねられていたそうです。キーンという耐え難い耳鳴りは一向に収まりません。安定剤も効きません。
発症1週間で結(ゆい)に来院されました。「ベットに横になっているのが落ち着かないんじゃないですか」と聞くと「はい、なんだかじっとしているのが嫌です」とのお答え、刺絡(しらく)という治療をしてから鍼をしました。気持ちは少し落ち着かれたようで、静かにベットに横になられていました。
1回目の治療で激しい高音の耳鳴りが収まりましたが、なんだか身体がだるくてしんどいとのこと。「異常な興奮が収まったからだるいんですよ、何日もろくに寝てなくて元気な方がおかしい、もっと眠れるようになれば治りますよ」とお答えしました。
2回めの治療の後は 眠れるようになり耳鳴りもほとんどなくなりました。普通に仕事にも行けました。アンケートは3回目の治療の時に書いていただきました。
◆コメント(アンケート回答)
「よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった」「治療前の苦痛を10とすれば2である」との回答で以下のコメントをいただきました。
耳鳴りが気になりだした時と比べれば今はだいぶ落ち着き、寝れなかったのが眠れるようになってきました。まだ気になるところもあり、普段通りとまではいきませんが、先生の優しさと治療のおかげで治っているなという実感があります。ありがとうございます。以上
◆考察
青年は肉体労働者です。病気らしい病気は今までしたことがありません。新型コロナ感染症の緊急事態宣言のために職場が閉鎖され、20日間ほど自宅から一歩も出ない生活を続けていました。身体の陰陽のバランスが崩れ、過剰な熱が頭に上がり、不眠 耳鳴り イライラ 考えがまとまらないといった状態になったのです。中医学的には陰虚陽亢(いんきょようこう)といいます。陽実(ようじつ)という要素も少しあります。身体はほてり、足は冷えていました。
オーバーヒートしたようなものです。身体を使って仕事を続けていたら、たぶん耳鳴りも不眠もなかったでしょう。過剰な熱(発熱とは違います)をとり、身体と精神を鎮静化させる補陰(ほいん)のツボをとって治しました。症状は激しいですが、身体のバランスを調整すれば治るので鍼灸にとっては簡単です。
3回目の治療の後は普通に仕事ができています。ただ夜になると軽い耳鳴りが出て、以前のようにぐっすりとは眠れません。もう少しの治療が必要なようです。2020年5月
※個人情報保護のため話の設定を少しだけ変えている場合があります。
2014年1月16日掲載
陣内(仮名)さんは30代後半の女性、20XX年の10月にいらっしゃいました。右耳が疲れるとポコポコいうそうです。首もこります。なんだか気持ちが落ち着かず、ちょっとしたことで不安になります。疲れやすく、夜も眠りが浅いそうです。陣内さんは幼稚園児のお子さんがいらっしゃいます。やんちゃでどうしたらいいかわからないそうです。子育てで悩んでいらっしゃいました。
3年前にメニエール症候群と診断され、そのときも針灸治療したとのことです。
2回治療したら、首のこりもとれ、よく眠れるようになりました。耳鳴や耳の違和感もなくなりました。子育ての悩みは続くけれど、妙な不安感がなくなったようでした。手足が冷たかったのですが、手の冷えはとれました。この段階でアンケートをいただきました。
◆アンケート回答
よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は3である。
☆陣内さんのコメント
治療に来させていただくのが楽しみです。張り詰める感じがとても少なくなってきました。今後ともよろしくお願いします。
陣内さんはその後も治療を続け、ずいぶん元気になりました。3ヵ月後も耳鳴や不安感の再発のないことを確認しています。ただ子育ての悩みは続くようです。まあ子育ての悩みは子どもがいくつになっても続くもののようですが。
自筆のアンケートはこちらから
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
2013年12月掲載
織田(仮名)さんは20代前半の女性、20XX年の3月にいらっしゃいました。
耳のつまり感、耳鳴、つばを飲み込んだとき音がするというのが耳に関する症状です。両耳がつらいけれどとくに左がつらい。めまいもある。肩や首のこりがひどく、ニキビもたくさん出ていました。頭もよくかゆくなるそうです。 昨年夏に両耳がひどく痛み出し、聴力も低下しました。その後聴力は回復し、痛まなくなりましたが上記の症状が残ったというわけです。気圧の変化で耳の症状は悪化します。
1ヶ月8回の治療で耳の症状はほぼなくなりました。めまいもつばを飲み込んだとき音がするというのが残ったので週1回にきりかえて治療継続、1ヶ月でほぼ音もなくなり、肩や首のこりもなくなりました。ニキビもずいぶん減りました。
8月になって耳のつまり感が再発し、再度いらっしゃいましたました。肩や首もこってきたそうです。これも1ヶ月治療してなくなりました。この段階でアンケートをいただきました。約4ヵ月後、目が疲れるということで来院されましたが、耳の再発はありません。ニキビも減って喜ばれています。少々無理をしても以前ほど疲れることもなくなりました。
◆アンケート回答
よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。
総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は2である。
織田さんのコメント 去年の夏から耳のつまり肩こり、首のこりをくりかえしてきました。また耳鳴やめまいもありました。しかし治療により首肩がこりにくくなりました。忙しい時は少し出る時もありますが、以前よりだいぶ楽になりました。ありがとうございます。
自筆のアンケートはこちらから
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
柴崎(仮名)さんは子育て真っ最中のキャリアウーマン、仕事も子育ても全力投球の40代の女性です。20xx年の5月に発作のように耳鳴り、めまい、吐き気が襲ってきました。いったん落ち着いたものの6月に再発。結(ゆい)針灸院にいらっしゃいました。医師からはメニエール症候群の疑いがあるという診断。「視界がワイパーのように揺れて、立ち上がることができない」との訴え。少し身体を動かすと吐いてしまうため、いったんふらつき始めるとじっと横になるしかありません。耳鳴りもあります。聴力検査に異常はないのですが人の声が聞き取りにくくなっています。首や肩もこります。
隔日で2回続けて治療したら耳鳴り、めまい、吐き気は消失、2週間4回の治療ですっかり元気になりました。人の声もはっきり聞こえます。半年後にめまいが再発しましたが、今度は軽いうちに来院されたので1回で治りました。
柴崎さんは中医学的には、清らかな陽の気、清陽が十分に頭に昇らずめまいが生じたと考えられます。気の循環がうまくいかなくなり、さがるべき気がうまくおりず、吐き気にも苦しめられました。上逆(じょうぎゃく)です。
子育て真っ最中のキャリアウーマンに無理をするなといっても無理な話。無理をささえるのが治療家の役割と心得ています。身体をこわして休職とかいう事態に陥らないように、体調が落ちてきたら治療することをお勧めしています。
ところで聴力検査に異常はなくても人の声が聞き取りにくいというのは、臨床でよく遭遇する訴えです。身体を壊して休職という段階まで至っていない人、3ヶ月ほど休みなく働くといった無茶な働き方をしていない人の場合はたいてい数回で治ります。聴力検査で異常があり、検査値が変わりなくても人の声が聞きやすくなる場合もあります。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
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